モクセンプロジェクト:高品質でローコストの家づくり

 

モクセンプロジェクトとは、「高品質の木造住宅を1千万円でどこまでつくれるか?」ということに挑戦した物語である…。

 

家づくりにおいて、消費者の一番の関心事のひとつは「お金」のこと。

完成予想図

1千万円で出来る「モクセンプロジェクト」の家 完成イメージ図

ローコストを売りにする住宅メーカーが多いのもその表れで、私たちもよく「お宅の住宅は“坪”おいくらですか?」と聞かれます。

坪単価は結果論であり、それぞれの家づくりによって異なりますし、坪単価の定義もまちまちで、その価格にどこまで入っているのかがわからないので、単純には比較できないもの。坪単価はおおよその目安にはなりますが、それ以上でもそれ以下でもないのです。

 

しかし、消費者の気になるのは「お金」のことなので、この「坪単価」という考え方が馴染みやすいようです。

より安く良いものを求めるのは当たり前のことですが、仕様も何も決まっていないのに表示されている坪単価というのは根拠がありません

実際には高品質の住宅はそれ相応にお金が掛かります…。「良いものは高い」「安かろう悪かろう」などと思われがちです。しかしそこには十分の説得力がありません。安さには必ず理由があり、その逆もまたそうだからです。

 

そこで、その理由を説明するためにモクセンプロジェクトでは「高品質でローコスト」をコンセプトに計画をした家づくりの全容を公開しました。

 

設定条件

家づくりは一般的には家主にあわせて行います。このモデルでは、「夫婦+子ども2人」という家族構成を想定しつつも、その後の変化を含むさまざまなケースに対応できるように考えられています。

敷地条件は最低12m×12m(144㎡:約44坪)から建設可能です(道路・方位等は、それにより間取が変わってくるので、あえてここでは設定を行わないことにし、外構及び外部配管等に関しては考慮しないことにします)。

 

Plan

囲の字型プランは、1間半グリッドで5寸の通し柱を梁で結ぶ単純な架構とし、耐力壁は全て外壁廻りでバランスをとって配置します。これによって内部の間仕切りはフリーとなり、内部間仕切りを全て建具として扱う。(1間半に2本溝の3枚戸)

今回のモデルプランでは1Fに18畳(3間×3間)のリビング・台所・寝室(4.5畳)・便所・脱衣・浴室(UB)を配置し、小屋裏(2F)に子供部屋ができます。

間取りはパズルのようなものなので、囲の字の中で、敷地の条件等に応じて対応します。

1F

1F

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2F



囲の字プラン

モデルの原点となったのが昔ながらの田の字プラン。これを現代社会にあわせて拡大解釈したのが「囲の字プラン」です。

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Section

FLをGL+600とし、軒高を2,850+2,850とし、通し柱を6m以内で押さえます。階高は2,890、階段は1間四方の廻り階段とし蹴上約190cmとなります。

低い軒高を2,850とし、そこから3.333…寸勾配の片流れ屋根とし、その小屋裏に2Fを設置できるようにします。

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軸組模型1

軸組模型1

軸組模型2

軸組模型2



Elevation

外観は内部空間を合理的に構成した結果の表れである。上下の仕上げを変えることにより単純な形ゆえの物足りなさを解消し、上部に塗壁を用い、下部をスギ板張りとします。

(法的に不可能な場合があります。)

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素材

pic_mokusen_10仕上げは環境及び性能に配慮して選定します。屋根は陶器瓦、外壁はシラス塗壁とスギ板張りとし全て土にかえる材料とします。

内部は床がスギ板張り、壁はPBにシラス塗壁、天井は小屋裏及び床裏見出しとし、2Fの壁は外部の耐力壁となるモイスを化粧として表しにします。断熱材は床下がウール(t100)とし、壁(1F)がセルロ-スファイバー(柱内充填)で2F及び屋根は同じくセルロースファイバーだが外断熱とし、屋根の野地板(杉)が天井になり壁の耐力ボード(モイス)が仕上げとなります。


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コスト

この内容にて、積算をした結果が下記です(内訳は添付資料参照)。

見積もりには照明器具や換気扇は含まれていますが、カーテンブラインド類は含まていません。また建物の外部配管や外構も別途計上となっています。

下表の左側が積算結果で約1,600万円(税込)という結果になりました。これは、モクセンプロジェクトですから、これを1,000万円に落とす方法を考えなければなりません…。

工事費 16,000,000 10,000,000
(消費税含まず)
(内訳)
仮設工事 408,000

223,000
基礎工事 780,000

780,000
木工事 4,284,026

4,284,026
屋根工事 608,065

608,065
板金工事 96,200

96,200
左官工事 865,900

765,900
木製建具工事 1,440,000

200,000
金属製建具工事 807,750

758,250
断熱工事 500,645

480,645
塗装工事 195,000

0
内外装工事 264,060

264,060
住宅設備工事 850,000

760,000
雑工事 718,000

150,000
電気設備工事 440,000

440,000
換気設備工事 100,000

100,000
給排水設備工事 200,000

200,000

直接工事費 12,757,646

10,110,146
諸経費 2,551,529

消費税 765,459

合計 16,074,634

10,110,146
端数調整 -74,634

-110,146

坪単価

減額作業の前に、モクセンプロジェクトの坪単価を計算してみましょう。

坪単価は「工事費/面積」なので、950グリッドのときに約51万円となり、910グリッドで約55万円、1,000グリッドで約46万円ということになります。

これは、坪単価が結果論にすぎないことをよく表しています。

木材はメートル単位で流通するため、2m5cmだろうが2m95cmだろうが3m材を加工することになります。つまり、910グリッドだろうが1,000グリッドだろうが構造材の値段は変わりません。

また、各種材料も規格があり、たとえばプラスターボードは910×1,820という規格になっています。柱間が910でも1,000でも1枚は1枚なのです。

逆に小さい方が捨てる量が増えるため、産廃処理のコストが嵩むことになります。面積が大きくても小さくても同じように設備機器が必要なので、小さい住宅の方が坪単価としては当然不利になります。

このように、坪単価は結果論です。根拠のない坪単価に振り回されないようにしましょう!

モクセン

減額作業の結果が左表の右側です。1,000万への減額方法はいろいろとあると思います。方法は様々です。通常の減額作業であれば、優先順位を決めて予算内でできることを絞り込んでいきますが、このモクセンプランでは減額の条件として品質は落とさず、後施工できるものや自分たちでできそうなことを外すことにします(これはあくまで一例としての提案です)。

減額案

・2階をなくす。(2F床及び階段を削除)⇒将来的に増築可能
・内部間仕切りをなくす。⇒カーテンや布などの簡易的な仕切りで対応
・外部木部塗装を中止
・内部塗壁は材料のみ⇒塗作業は自主工事
・設備機器等のグレードを落とす
・諸経費をなくす⇒建主による直営工事

これにより高品質の木造住宅が1,000万円で建設可能になります。

削除したのは、2Fや間仕切りなど将来的にできるところや内部の塗壁など、見た目はともかく機能的に支障がなく自分たちでできる部分を自主工事としています。

最大のポイントは諸経費を削除している点です。これは値引きではありません。設計・監理・工事管理も含めて自主工事、いわゆる直営工事にするということです。

業者は業として建築を行うために許可をとって仕事をしているわけですから、経費をいただかなくては生きていけませんが、直営工事では上記の削除は不可能ではありません。仕上がりを気にせず、時間的な余裕があり、建築的な知識があれば可能な話です。

モクセンプロジェクト

この結果を聞いて、「何かだまされたような…」と思うかもしれません。

しかし、このモクセンプロジェクトは1,000万円の住宅として価格競争に打って出るためのものではありません。実際に建設可能なプロジェクトです。

車にはハンドルが××円・タイヤが××円などという明細をあまり見ない場合もありますが、住宅には各種専門工事に分かれ、それぞれに内訳がはっきりとあるのです。延べ面積だけで坪単価で簡単に計算できるものではありません

車は先にモノができているから価格がありますが、家は受注生産です。どのようなカタチにするか? どのような材料を使うか? またどんな敷地の条件があるか? 等によって金額が変わってきます。

想定できないものは計算することができません。よく「○○円より~」という表現をするのは、想定できる範囲で最低の条件で仕様を決めて計算して、想定できないものは外して考えているのでしょう。

「価格が見えるから安心」と思いがちですが、根拠のない価格は本来は不安なはずです。先に述べたように住宅には必ず明細がありますから、価格があるのであれば、その仕様と明細を吟味して検討をすることが大切です。

住宅はゼロからのものづくりです。基本的につくるまえに明細などありません。

そこで大切なのが家づくりのパートナー選びです。パートナーとは、ドライブに例えれば車の助手席に乗せる人です。

パートナーには大きく分けるとハウスメーカー工務店の営業マン大工さん、そして設計事務所といった選択肢がありますが、一長一短あると思いますし、向き不向きもあります。また何よりそれぞれに「いろんな人」がいますので、私自身は設計事務所ですが、一概にどれが良いとは言えません。

車の場合は先にものがあるのでデザインや乗り心地などが事前に確認できますが、住宅にはそれができないので、それぞれの家づくりの事例を体感しながら話を聞いて、じっくりと家づくりのパートナーを探すことをお勧めします。

あくまで、ハンドルを握っているのはあなたですから、くれぐれもハンドルを奪われないように注意して下さい。

このモクセンプロジェクトはコマーシャリズムに流された住宅産業に対する「ささやかな抵抗」であり、これからの家づくりのひとつの「ものさし」としていただければと思っています。

そして、家づくりを行う際に気にして欲しいのが「木」のことです。

宮崎は日本一のスギの生産地です。スギは学術名を「クリプトメリア・ジャポニカ」といいます。日本の隠れた財産という意味です。

京都議定書における日本のCO2削減量は1990年比の6%です。このうちの3.9%が森林吸収による削減となりますが、それは整備をされた人工林が対象で、いわゆるスギ・ヒノキの経済林です。

この、地域に豊富にあふれる財産「スギ」を活かした家づくりによって、地球環境にも宮崎の経済にも貢献できるのです。

家づくりにはいろいろと面倒なこともありますが、それをひとつひとつ楽しみながら、本当の財産となる家づくりをしましょう。

 

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